A型は几帳面。B型はおおざっぱ。私たちは、血液型を性格に結びつける。もちろん、血液型と性格に統計上有意な関係はない。しかし、血液型性格関連説の本は売れ続けている。
血液型と性格が関連しているという科学的証拠がないのに、人々はそれを信じる傾向にあるのは、確証バイアス(confirmation bias)を考えると説明がつく。確証バイアスとは、仮説の真偽を確かめようとするとき、人々は確証情報に注目し、反証情報に注目しない傾向のことである。このメカニズムは、記憶過程、仮説検証過程、解釈過程を詳しくみることにより明らかにすることができる。
Cohen(1981)の実験では、実験参加者に、ある女性が誕生日を祝ってもらっているビデオを見せた。事前に、実験参加者の半分には、ある女性が図書館司書であると伝え、残り半分の実験参加者には、ウェイトレスだと伝えている。ビデオを見たあと、ビデオに映っていたものと映っていなかったもののリストを見せて、映っていたものを答えるように指示した。すると、事前に伝えていたある女性のイメージと合致したリストを答える傾向にあった。イメージに一致したものをよく覚えていたのである。血液型の場合にも、血液型性格関連説を支持する事実のみを記憶しがちだと考えられる。そして仮説が支持されたと思ってしまうのである。
また、肯定的検証方略(positive test strategy)という仮説検定の方法がある。これは、ある仮説を肯定される回答が得られるように質問することである。「あなたは社交的ですか」という質問に対し、社交的でない人が否定できたら問題ないが、誰もが外交的な部分と内向的な部分を併せ持っているため、回答者は質問を肯定する部分を探して、その要素を見つけ肯定してしまう。よって、肯定的検証方略は、回答者の肯定的回答が得られやすく、仮説が誤って検証されてしまう可能性がある。血液型でいえば、A型の人には、「きれい好きですか」と質問してしまい、バイアスがかかった回答が得られてしまう。
仮説によって、観察される人物の行動の解釈に影響を受けることもバイアスを生む。Kelley(1950)の実験では、ある講義で代行の講師を用意し、その受講者にはあらかじめその講師のプロフィールを渡した。プロフィールの半分には、講師の性格が「温かい」と書き、残り半分には「冷たい」と書いた。講義終了後のアンケートでは、「温かい」のプロフィールを受け取った学生の方が、「冷たい」の学生より講師を好ましく評価した。事前に設定した、この講師は「温かいだろう」「冷たいだろう」という仮説が、講師の行動の解釈に影響を与えたのである。
このようなメカニズムにより確証バイアスが起こり、血液型性格関連説は支持されていると人々は思う。確証バイアスは、この他に占いなど、社会のいたるところで見受けられる。確証バイアスは、抑制することが難しい。このことは、私たちが日頃行う研究への助言となる。反証情報を十分に吟味することが大事なのである。
CohenC.E. (1981). Person categories
and social perception : Testing some boundaries of the processing effect of
prior knowledge. Journal of Personality and Social Psychology.40, 441-452.
Kelley.H.H.
(1950). The warm-cold variable in first impression of persons. Journal of
Personality.18, 431-439.
池田謙一他. (2010). 社会心理学. 有斐閣.
訂正:最終段落で、確証バイアスはシステム1で起こるとしていたが、抑制が難しい=自動処理(システム1)とはいえないため訂正した。
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