-学問と実務の架け橋を目指して-

2012年6月26日火曜日

【ス】改正著作権法


 20日、改正著作権法が参院で可決され、成立した。違法にアップロードされたものと知りながら、音楽や動画をダウンロードする行為に、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される。著作権者などの被害者が告訴しない限り起訴できない親告罪となる。これまで、違法配信をアップロードすることには罰則があったが、ダウンロードすることには罰則はなかった。音楽業界は罰則化を求めていた。
 ただ、この法改正に反対の声も聞こえる。違法配信かどうか利用者にとってわかりづらいことが多く、捜査当局の恣意的な捜査を招きかねない。また、抽象的な条文となっており、規制する対象が恣意的に拡大されるおそれもある。Youtubeやニコニコ動画では動画を一時ファイルとして保存しながら再生する「プログレッシブダウンロード」という方式が採られており、条文の解釈によっては規制対象になりうる。文化庁はYoutubeなどでの違法動画再生は問題ないという見解を示しているが、捜査当局がそれに拘束される訳ではない。
 政府は当初、改正案について違法ダウンロードの罰則化を念頭においてなかったが、自民・公明両党が修正を提案し、盛りこまれた。

2012年6月23日土曜日

【評】原発議論での2分化より


 福島の原発事故を契機に、日本で原発のあり方について議論が活発になった。あのような事故が起きたのだから自然の流れだろう。ただ、メディアがこの議論を取り扱うとき原発容認と反原発に単純2分化してしまっている。これは議論に誤解を生むゆゆしき問題だ。
 メディアは議論をよく2分化する。原発容認と反原発。消費税増税賛成と反対。2分化した方が、視聴者にはわかりやすいからだ。しかし、2分化することは、視聴者に誤解を生むことが多い。だいたいは正しい区分ではないのだ。原発容認といっても、原発を増やすべきと考える人もいれば、現状維持を支持している人もいる。原発反対の人といっても、すぐに止めるべきと考えているかもしれないし、長期的に止めていくべきと考えている人かもしれない。もしかしたら長期的になくすべきと考えている人は、原発容認に入っているかもしれない。2分化しても、それぞれ多様なのだ。この多様性を排除して報道するために視聴者に誤解を与えかねない。
さらにメディアが単純に2分化することで、それを受けて、視聴者は議論する者を正と悪に2分化してしまう可能性を孕む。正しくない2分化によって、議論する者は正・悪のレッテルを貼られる。2分化以外の多様性の意識がうすれ、2分化を基本に視聴者は思考してしまう。これは議論を正しく理解できない。さらに、2分化を基本に議論が行なわれるようになれば最悪だ。
2分化の問題は、メディアのあらゆる場面で見受けられる。メディアはその姿勢を改め、視聴者は、そのような報道に踊らされないようにしなければならない。

【評】ソーシャルゲーム業界の分岐点


 「ソーシャルゲームの業界って勢いあるよね。」「あの任天堂がソーシャルゲームに押されているね。」こんな会話を聞いたことがあった。ソーシャルゲームとは、他のユーザーとつながりながらプレイするオンラインゲームだ。日本では、GREEDeNA代表的な企業である。確かに、最近、GREECMがよく流れるようになったし、去年プロ野球球団の横浜ベイスターズをDeNAが買い取っており、勢いがある業界なのだなとは感じていた。しかし、実際肌で感じる感覚は違っていた。周辺でソーシャルゲームをしている人に全く出会わなかったからだ。若者向けが中心の顧客であるはずなのに、大学生である私の周りで見かけない。ただ私が属している共同体が特異なだけなのかと思っていたが、「コンプガチャ問題」の報道を見て、私の感覚が的外れでなかったことを確信した。
 ガチャとは、料金を支払うとアイテムを手に入れられるガチャガチャを模したものだ。アイテムをコンプリートしたら貴重なアイテムを手に入れることができる。しかし、ガチャでどのアイテムを手に入れられるかはわからない。よって、ユーザーは多額なお金をつぎ込んでしまいやすい。このシステムが消費者の射幸心を煽っているとして、問題となったのがコンプガチャ問題だ。
 一連の報道で、ソーシャルゲーム業界は、一部のユーザーから多額な料金を得ていることがわかった。そして、月に万単位の料金を支払うユーザーによって成長を遂げていることがわかった。就活生向けの説明会で某大手ソーシャルゲーム会社が、一部のユーザーを相手にしていると明言していることからも、そのことが察せられる。
ソーシャルゲーム業界は、このような一部の消費者に依存したビジネスモデルの構築ではなく、もっと消費者の幅を拡大させる努力をすべきだ。一部を相手にすると、射幸心を煽るようなシステムに陥ってしまう。今回明らかになった問題と真摯に向き合い、ソーシャルゲーム業界の新たな出発にしてほしい。そして、社会に受け入れられたときには、持続性がある「勢い」を手に入れることができるだろう。

2012年6月20日水曜日

【評】決められない政治への道


昨年、最高裁は09年衆院選挙に対して違憲状態との判決を出した。それにも関わらず衆院選挙制度改革は一向に進まない。確かに、各党にとって大変重要な問題であるために、熟議が必要となり、時間はかかるだろう。しかし、より一層この議論を進まなくする事情が他にある。それは逆転国会だ。この状態である限り、民主党は力強く改革を先導することができない。野党との合意なくして、法案は通らないからだ。
もちろん、逆転国会であっても、与野党間での議論により、法案を通すことはできる。むしろ、これが国会の望むべき姿なのかもしれない。ところが、選挙制度のように各党の利益が一致しづらい問題になるとたちまち決められない政治に陥る。
民主党は18日、衆院選挙制度改革の関連法案を単独で提出した。自公との合意は得られなかった。ただ、公明党に配慮し、連用制が盛り込まれている。連用制は中小政党に有利に働く性格を有する。この法案の制度を、09年の衆院選挙で想定してみると、公明党など中小政党の議席が急伸し、2大政党制は影をひそめ少数乱立の状態となる。
もし、現実に少数乱立状態になったら、日本の政治はどうなるのだろうか。各党が建設的な議論を行なうことができるだろうか。今の日本の政治を見ていると、私には不安がよぎる。選挙制度のような難題ではない問題でさえも、決められない政治になってしまうのではなかろうか。

【ス】衆院選挙制度改革


昨年、最高裁判所は09年の衆議院選挙について違憲状態だという判決を下した。有権者の一番少ない高知3区の1票に対し、全国一多い千葉4区は約0.4票分しかなかった。1票の重みに格差が生じ、憲法第14条「法の下の平等」に反する状態にあるとの判断だ。
これを受け、国は衆院選挙制度改革に取り組むことを一層迫られた。しかし、判決から1年以上経っても進展は見られなかった。選挙制度は、各党の勢力に直接影響をもたらす問題であるため、民自公の3党でさえも合意できる案が作れなかった。
そんな中、民主党は18日、衆院選挙制度改革の関連法案を単独で提出した。単独での提出に踏み切ったのは、消費増税法案可決を前に、痛みを伴った改革への姿勢を国民に見せたかったからだ。
ただ、「連用制」が盛り込まれたこの法案に自民党は反対し、公明党は一定の評価はしているものの態度を保留中。可決されるかはまだ不透明だ。