テレビやラジオの音楽番組で、CD売上ランキングをよく紹介している。アーティストが初めてオリコン1位になったり、連続1位記録を更新したりすれば、朝の番組で報道される。100万枚売れば、テレビ・雑誌で見ない日はなくなる・・・。CD売上枚数に関する情報は私達の周りにあふれている。そして、私たちは、CDの売上枚数をアーティストの人気バロメーターとして捉えている。
近年、CD業界は縮小し続けている。日本レコード協会によると、CD市場は、全盛期の1998年には6074億円だったのが、2011年には2818億円と半分以下になった。13年連続で、前年を割っている。なぜならば、消費者がCDを買う必要がなくなったからである。CDを買わなくても、レンタルする、もしくはネットでダウンロードすれば音楽を聞くことができる。どちらもCDより安価なので、それらを選ぶインセンティブは強くなる。さらに、違法ダウンロードも横行している。無料でネットから音楽を手に入れることができる。
安価に、もしくは(違法だが)無料で手に入れられる音楽を、消費者がCDとして買うには、金額の差額分を埋める付加価値が必要となる。今のCD業界を見ていると、この差額を埋めることができている価値は2つある。1つ目は、消費者のCDに対する所有価値だ。好きなアーティストのCDは、部屋に置いておきたいものだ。2つ目は、CDに付く特典の付加価値だ。握手会やライブのチケット応募券などが付属されている。
消費者は、レンタルやダウンロードすることに慣れてきており、所有価値のためCDを買うハードルが高くなってきている。所有価値でCDを買う人は少なくなり続けているのだ。それに対して、特典で高めた付加価値によって、売上を上昇させることには、アイドルが出すCDを筆頭に、成功するようになっている。
すると、売上ランキング上位に入るアーティストの性格が変わってくる。特典で価値を高めたCDが、上位に入りやすくなる。また、CD購入層から流れ出た、レンタルやダウンロードでの楽曲購入は無視される。CD売上枚数は、楽曲の人気のバロメーターとしての性格は薄くなる。
CD売上ランキングを、人気指標として捉えるのは正しくない。ランキングを見て、最近世間が受け入れる音楽は低レベルだ、という人がいる。これは違う。正しく人気を示すランキングではないからだ。世間の鏡になっていないのだ。人気のバロメーターとして、CD売上枚数を使う時代はもう終わったのだ。
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