-学問と実務の架け橋を目指して-

2012年8月27日月曜日

【ス】アップルとサムスン電子の訴訟合戦


 24日、米カリフォルニア州連邦地裁で、韓国サムスン電子に対し、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の一部特許侵害があったとして、米アップルに105千万ドル(約830億円)の支払いを命じる評決があった。アップルの訴えはほぼ全面認められたのに対し、アップルがサムスンの特許を侵害しているとするサムスンの訴えは退けられ、アップルの完勝となった。
 アップルとサムスン電子間の訴訟は、世界各地で起こっている。ドイツでは、アップルの訴えが認められたが、オーストラリアではサムスンの訴えが認められた。日本でも裁判中である。
 サムスン電子は、スマホの基本ソフト(OS)に米グーグルのアンドロイドが採用されているため、アップル対グーグルの代理戦争としても注目されている。アップルは、グーグルの傘下にあるモトローラ・モビリティやアンドロイド携帯を開発している台湾HTCなどにも訴えを起こしている。
 スマホの商品サイクルは早いため、特許侵害が認定されても影響は小さいとみられる。両者の利益を考えれば、賠償額が経営に影響することもほとんどない。ただ、ブランド力に対する影響は必至だ。サムスン電子は、アップルと並ぶ企業という印象を消費者に与えることはできているが、消費大国アメリカでの敗北は、ブランド力低下の懸念が大きい。今回の評決に対し、サムスン電子は控訴するとみられている。

2012年8月23日木曜日

【評】感情的反原発


 毎週金曜日、反原発デモが官邸前で行なわれている。その代表者数名と、23日、野田首相は会談した。この会談は有意義なものには成り得ない。もちろん、この会談はただのポーズで、何か両者間で進展することが期待されていたわけではないのだが、日に日に高まっている(らしい)反原発デモからは全く冷静な論理を持った主張が見られず、感情論から脱せられていないため、反原発の主張はただの一人よがりなものとなっているからだ。原発=悪=何も考えず即刻廃棄、では一時の感情論でしかない。
 感情論はやがて冷める。反原発を主張するならば、熱が冷めても残る論理を準備しておかなければならない。関西の夏、北海道の冬、厳しい気候で停電が起きるリスクも考えずに、また経済的損失を一切考えずに、再稼動反対と叫んでもしょうがない。短期・中期・長期の視点のもと、冷静な主張をしなければ、一時の戯言で終わる。

【訃報】 山本美香さん


 20日、シリア北部アレッポで、国際ジャーナリストの山本美香さんが銃撃を受けて亡くなった。昨年、私は大学で、山本さんの講義を受けた。フリーの立場で紛争地域に出向く山本さんのジャーナリズムに感銘を受けた。ただ何よりも印象的だったのが、職業とは裏腹に、言葉や仕草に人間的な優しさを持っていたことだ。このような方が紛争地域に向かうことに、甚だ違和感を覚えたくらいだ。生徒全員の感想に返信を返すようなまじめさと、人間的な優しさを合わせ持った山本さんが撮った、紛争地域の子どもや女性たちに、山本さんのジャーナリズムが映っているように思う。

2012年8月22日水曜日

【評】原発再稼動の是非はリスクとともに

 今年の夏は、電力需給の逼迫が懸念されていた。特に、関西電力は原子力発電への依存度が高かったために、厳しい需給予測がされていた。よって、大飯原子力発電所の再稼働へとつながった。
 今年は猛暑日が続いているが、今のところ全国の電力に余裕がある。関西地域を始め全国で、計画停電も行なわれていない。このような中で、大飯原発の再稼働は不要だったとの論が見受けられるようになった。このような結果論は、リスクの視点が抜け落ちている。
 関西地域では727日に、最も電力が逼迫した。その日の供給は3003kw、ピークの需要は2650kwであった。大飯34号機の出力は240kwなので、30032402763kwが原発なしでも供給でき、需要を上回っているので再稼働は不要だったとの主張がある。これは間違っている。原発の電力で揚水を行なっているので、その分も差し引くと供給電力は2542kwとなる。これは、需要を明らかに下回っている。すると、他の電力会社からの融通で足りるという主張がでる。そのときに、他の電力会社が十分融通できたかも怪しいが、結果的に足りていたなどという主張は、リスクを考えていない。
 もし停電になっていればどうなったか。自家発電を持たない小さな病院では死者がでていたのではないか。高齢者はこの猛暑の中、耐えられただろうか。経済活動への打撃も十分にある。また、再稼働をしなかった時点で、さらに厳しい需給予測がされ、企業が関西から流れたり企業活動を縮小したりして、経済的損失を生んでいただろう。このようなリスクを想定せず、ただ結果だけで論を張ることはできない。今回の結果は、これからの予測や指針に活かすことはできたとしても、実際に原発なしでは需要が供給を上回る事態が起きているため、再稼働をした判断への反論にはなりえない。しっかりリスクと向き合ったうえで、原発再稼働を考えなければならない。